金沢は夏の空
金沢は夏の空
東茶屋街に着く頃には西日が差し始め
こちらに向かってくる人たちを抗うように二階建ての日本長屋の軒並みを
小さな町の中心へ歩いた。
金沢は夏の空
風が少し乾いている
木造建築の並んでいる通りに白い石作りの建物は洋食屋さんが見えると、少しの広場に出た。
広場からは不揃いの細い辻が風車(かざぐるま)のように伸びていて、電信柱と赤い郵便ポストが、僕の生まれる前、日本の風景を忍ばせた。
看板を読むと大正時代の建物らしい
明治の厳格から、つかの間、賑やいだ大正の名残りがあるのだろうか。
二階が空いてそうだったので、カフェに入った。
窓枠を大胆にとっぱらった土壁側の席に座って 隣の軒をのぞくと風鈴が三つ、乾いた音をさせている。
金箔をその先端に散らしたソフトクリームを食べる中国からの観光客も、
上で束ねて、うなじ覗かせたピンクの着物の女とヒョロッとした和服でツツンツンと短髪を立たせた若いカップルも石畳を歩く。
その店のブレンド珈琲を頼んだ。
ギラギラと照り返す茶黒色い瓦屋根に
青い空が張り付いている。
この地域も週末には梅雨入りだというけど、そんな気配はどこにもないようだ。
二階からの眺望を素早く横切る小さな黒い鳥いる。
鋭く飛び返し白い腹をみせ視界から消えていく。
小雪のように、ふわふわと何かの種子だろうか通りの真上、宙を舞っているそこに飛び込んでいく。
ツバメだ。
そういえば、ピーピーと軒から雛の声がする。粉雪は小さな羽虫であった
金沢の西日に
映えし
茶屋つばめ
20170606
茶屋
ツバメ
金沢
子育てに励む
裏の通りには魚屋さんがあり、生活の匂い
大正ロマンの名残り