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☆TAKISHITA RYO Official Blog ☆

99匹の羊と悪魔について「Django V(ジャンゴ ファイヴ)より」

2019/09/27
 

「Django V(ジャンゴ ファイヴ)」の稽古も半ばを過ぎた頃からだろうか。

目が覚めて朝は、未だ暗い。
スタンドライトをつける。

枕もとに置いてある、
聖書講話のひとつを読むことが
習慣になっていた。

理由は僕が今、悪魔を演じているからだ。

聖書講話というのは、クリスチャンや牧師さんが聖書のエピソードから、
それについての学びを語っているものだ。

いくつかの本やエッセイを読んだ。
なるべく聖書の世界を活き活き描いているものが楽しい。

遠藤周作さんの「イエスの生涯」は、
20代の頃イスカリオテのユダ役を演じた時にとっても参考になったけど、
今回の悪魔役にはピンとこなかったが、相変わらず読みやすい。
颯爽としたイエスさんが、やっぱり健在していた。

 

もちろん僕はクリスチャンでもなく本格的に聖書学んだこともない。
20年以上前に古本屋で手に入れた辞書みたいな聖書を引っ張り出し
今回の悪魔役のヒントになるかもと、ペラペラとめくってみる。
旧約の神の威厳さ。あいかわらず新訳のイエスさんの軽やかさ。
いつ読んでも読みにくい文語体の言葉を、神威おかまいなし奔放に読むのが楽しい。
結婚してから読むダビデの歌が、愛の讃歌として深く響く。
読み継がれ続ける聖書は、詩であり物語りであり、魅了する知の源泉だ。

「Django V(ジャンゴ ファイヴ)」という作品。
僕が演じるのは、魂を奪うかわりに【この世の幸せを味あわせる】
悪魔のジャンゴという役だ。

これまでジャンゴという悪魔を5作品、演じてきたが「悪魔とは、なにか」それはいつも考えているけど、それよりなにより聖書に描かれている世界を、活き活きと感じ続けたかった。
むろんジャンゴシリーズは「聖書」なんて台詞が一言も出てこない作品なんだけど。

必要なのはただの知識ではなく、いわば「知肉」みたいなモノだ。
台本に描かれたジャンゴの言葉に躍動感を与えるものだ。

目覚めたひとときの枕元で
本番が終わるまで繰り返し読んでいたのは小林牧子さんの「桜の木の下で」と手島郁朗さんのfree paper。
どちらも神を真近に魅せてくれた。
いい講話は、冷静で熱く迷いがない。

たった一言が悟りのキッカケになるのは芝居でも、よくあること。それをいつも探している。

稽古も終盤。
僕にとって芝居のキモとなる「新しい台詞」がついた。俗に言う「台詞が増えた」だ。
前半シーンで悪魔のジャンゴが獲物となる老人達を諭している場面だ。

ジャンゴ「若いころ、電車に乗っていて、その電車が人身事故で止まったとき、なんでこの電車なんだろ(…… ……)思ったよね」

ジャンゴ「地震や津波で死んだ人はかわいそうで、電車に飛び込んだら仇同然なのか?同じ命なんだぜ」

(コノ芝居、活ケル)を根拠なく思う瞬間だ。
「芯さえあれば、飯何杯でもいける」のが僕ら役者だ。芯とはそのキャラクターがとる行動の原理原則を貫いている大事な部分の事だ。

まあしかし、

いつだって役者本人の感じる芯なんてものは感想を聞くなら飛び切り美味しい料理を失敗した食レポで解説したみたいなものだ。だが本人にとって深く解る瞬間は、圧倒的な衝撃を受けるヤバイくらい悶絶快楽の時なのだ。

ここで、それは何だったか?

少し恥ずかしいが語ってみよう。この役者の悦楽は、芝居の魅力のひとつでもあると想うから。

僕が台詞を付けられながら思い出していたのはイエスさんの有名な一節
「99匹の羊の例え話」だ。

聖書の講話を読んでいた僕には
ジャンゴの台詞が、イエスさんの言葉のアンチテーゼに思えたのだ。
閃きは、それだった。

「あなた方のうちに百匹の羊を持っているものがいたとする。その一匹がいなくなったら、九十九匹を残しておいて、いなくなった一匹を見つけるまでは探しに行かないであろうか」ルカ15章4節

平成は災害の多い印象だった。僕も東日本大震災で被災した側ではある。よくニュースを観ていてよく思うのは「名前の無い死」のことだ。ニュースで流れる日本も含め世界で起こる100人や200人、いやそれ以上だってある死の報道。もちろんニュースは、その普通ひとりひとりを取り上げたりはしないのは、その性質上しょうがないのだが、でもいつの間にか「名前の無い死」に慣らされている自分がいる。
いつの間にか、自分ゴトではない、たくさんの遠い死には「かわいそうに」と共有できる自分がいる。

悪魔は必ず契約書に本人の「名前」を書かせ、自分の欲望と向き合い
「この世の幸せを味あわせて」その人間の魂を奪う。

そして
ヨハネ10章3節 には「彼(羊飼い)は自分の羊の名をよんで連れ出す」とある。イエスさんの羊飼いも迷える羊の「名前」を呼んでさがしたに違いない。

今回の話ではタンゴというエリート女悪魔(滝佳保子が演じた)が、老人達に健康になる体操と元気なる薬の注射で、全国のホームをめぐり老人達の魂を大量に地獄に送っているというエピソードが出てくる。タンゴは一度にたくさんの老人達と悪魔の契約して効率よく老人達を大量に地獄へと送っていく。もちろん物語ではこのタンゴとジャンゴの対決になるのだが。
タンゴの魂の大量な獲り方は「名前の無い死」ともいえる。
99匹の羊のエピソードから、名前のない、大勢に思えたのだ。

一方ジャンゴが契約を結んだ、たった4人の老人。

本編ではカットされた、4人の老人との台詞に、こんなのもあった。
森屋「いやでも待って、わしらより、悪いことしている奴らたくさんいるだろ。人殺しとか、ゴーンとか」
ジャンゴ「そういうやつらは、ほっといても地獄にいくからいいの。俺が担当するのは、どっちにいこうかなってフラフラしているやつら」

【たった一つの魂のことを、むしろ特別ではない、どこにでもあるだろう命のことを、考えている】

「電車に飛び込んだ孤独な死」と「たくさんの死 」の話。
悪魔に倫理なんか、関係ないだろう。
でも彼は自分の獲物となる人間たちに『死ぬ思いの仕方』を、つまり
この上ない「この世の幸せを、味あわせて」魂を送りたいだけなのかもしれない。

【ひとつの死と向き合うということは、生きることと向き合うことだ】

稽古は、残す本番までの数日間。
演者と役の蜜月(ハネムーン)は、束の間の甘い香りに誘われて茨の道への門戸を叩く。やがて舞台の幕が開き、曝け出し、千秋楽まで続いていく。
何度、練った役でも、未だ発見であり、血肉として舞台を、生きたいと思う。

「コノ芝居、活ケル」は作業の始まりであり、役者の深淵だ。

答えはない。想像するから面白い。
永遠に求めて、それに答えてくれているジャンゴという悪魔の役。

刺さる芝居。
心に残るキャラクターは、
誰が創るのか

それは成長に、他ならない。
作家も役者も。
「求めよ、さらば与えん。」

これもイエスさんの言葉だ
山上の垂訓(マタイ 7章)だ。

自分の内なる神が目覚めるということをクリスチャンは
「回心(コンバーター)」というのだそうだが

魔が、覚める。
そんな舞台を、活きれたら、と思う。

そして最後に
前述「99匹の羊の話」は、
こう続く

「よく聞きなさい、罪人がひとりでも悔い改めるなら、悔い改めを必要としない九十九人の正しい人のためにも大きい喜びが、天にあるであろう。」ルカ15章(こういう一言に、神のためのリアリストだったイエスさんがとってもよく出ていて面白い 笑)

どのシリーズも結局ジャンゴはその人間の魂を奪えず、
次の獲物となる人間を見つけに旅に出る。
その願いを自分のためではなく他人の為に叶えようとした時に悪魔の契約は、無効になるのだ。

天界の反逆者、地獄の大魔王サタンは、神に仕える大天使だった。
そのサタンと一緒に地獄へ行き地上へ降りたのがジャンゴだったという。(「Django2 love story」)

悪魔ジャンゴのやっていることが、結果、天を大いに喜ばせることになっている……

ジャンゴがゴット(神)の倅(せがれ)と呼んでいるイエスさんの言葉。

なぜ悪魔が存在するのか
そんなところも、
この物語の魅力なのかもしれない。

ひとつの命に、こだわる悪魔。

【99匹の羊のアンチテーゼとしての、ジャンゴ】

演者自身はそんな、どうでもいいかもしれないことを、大事に
日々考えながら、忘れながら、曝け出して、魅せモノにすべく練っております。
そのひとつひとつが本番に宿りますように、と。

それもでも、なにも
消えてしまうが
舞台の出来事。

公演が終わってしまえば忘れてしまう。これもひとつの、覚え書き。

………………

………………

好評のうちに幕を閉じた「Django V」
過去作のジャンゴを見てくれた方々に「久しぶりのジャンゴに会えて嬉しかったです」また初めて観て
「また、観たいです」とのいくつも声をかけていただき、本当に感謝しております。

毎日マイク無しの生声の歌唱もあり、どのシーンも台詞のてんこ盛りでも、
どうにか僕の非力な声帯も、最後まで持ってくれた。
たくさんの差し入れと陣中御見舞い、有難う御座いました。

感謝。

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